

2023年5月17日
「使わなくなった井戸がある」「古民家の解体と一緒に井戸も閉じてしまいたい」。
古い家屋の解体を検討している方は、このように考えることもあるでしょう。井戸の埋め戻しは、自分でもできるように感じてしまいますが、適切な手順を踏まなければ、周囲に影響を及ぼすおそれが否定できません。
この記事では、井戸の埋め戻し費用の相場や手順、注意点について解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
古い民家によくある井戸は、使用しなければ悪臭などの原因となります。そのため、埋め戻すことを検討する人も多いでしょう。井戸を埋める方法はありますが、砂などで井戸を埋めて塞げば終わる訳ではありません。
井戸を埋めるには、専用の工具や重機が必要です。また、守らなければならない手順もあるため、解体業者へ依頼することが一般的です。
井戸を埋め戻すときにかかる費用相場には、以下の3つが挙げられます。
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
井戸だけを埋め戻す場合の費用の相場は約10万円です。
相場は10万円程度となりますが、井戸の場所や工事の手順によって5万〜20万円ほどと費用に幅があります。費用に幅が出る原因は以下のような要素が関係するためです。
また、一般的には井戸の埋め戻しには、コンクリートやレンガを原料としたリサイクル砕石やリサイクル砂を使用します。そのため、埋め戻しに使う材料の種類や質によっても費用が変動するといえるでしょう。
家の解体と同時に井戸を埋める場合は、家屋の解体費用に加えて費用が発生します。その場合の井戸の埋め戻し費用の相場は、3〜5万円です。
最初から家屋の解体と同時に井戸を埋め戻す場合・家屋の解体中古井戸が見つかった場合のいずれも、埋め戻す費用に変わりはありません。
家の解体と同時に埋める・井戸単体を埋め戻すときの費用相場が異なる理由は、解体工事で発生するコンクリートの砕石を、利用できるためです。そのため家の解体と同時に井戸を埋め戻す方が、費用を安く済ませられます。
井戸の埋め戻しをする際、事前にお祓いをすることが一般的です。埋め戻し前のお祓いを依頼する費用の相場は、3万円程度を支払います。
また、お祓いを神社やお寺に頼むときは、お祓いを執り行うのにかかる費用以外にも、神主や僧侶が現地まで訪れるために必要な交通費や出張料などが別途発生することも覚えておきましょう。
井戸埋め戻しの手順には、以下の3つが挙げられます。
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
古くから日本には「井戸に神様が住んでいる」という信仰があるため、一般的には井戸を埋め戻す前に、お祓いをします。お祓いの方法や手順については、地域の風習があれば従います。しかし、特に定められていない場合は、神主や僧侶へ任せましょう。
お祓いは、埋め戻し作業に直接関係ない作業のように見えますが、お祓いの有無に応じて、土地の売買契約を大きく左右することもあるようです。
息抜きとは、井戸の底からパイプを通す作業手順です。息抜きは、井戸の底に溜まった水やゴミを取り除いてから行います。息抜きを行う理由は主に以下の2つです。
これらは信仰的な意味合いもありますが、井戸があったことによる地盤沈下の予防や、建物をこの上に建築しないようにといった警告も含まれています。
最後に井戸を埋め戻しますが、このときには井戸を掘る前の状態に戻すことが理想とされています。しかし、地層の関係から元通りにするのは難しいため、水質への影響や地盤沈下に注意しながら埋めます。
また、井戸の埋め立てる素材は、井戸の底と上部で異なります。埋めたあとは井戸枠を撤去し、整地すると井戸の埋め戻しの手順は終了です。
井戸を埋め戻すときの注意点には、以下の5つが挙げられます。
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
井戸を埋める際、いくつか意識するべき考え方があります。昔の人に多いのが「埋めてしまうのはもったいない」というものです。昔の人にとって、水を確保できる井戸は貴重な財産でした。そのため、簡単に埋めてしまうのはもったいないと考える人がたくさんいます。
近頃では、井戸を災害時の緊急用の水源として見直す考え方もあるため、埋め戻しを検討する際、本当に埋めてしまってもよいのか慎重に判断しましょう。さらに、周辺の井戸の水質を保つために、きちんとした手順を踏んで埋め戻すことを意識するようにしてください。
地下に構造物がないかを確認することも重要です。井戸の埋め戻し作業を進めていく中で、地下構造物や地中埋蔵物が発見される場合があります。
地下構造物などは地盤を支えていることもあるため、作業を行う際、慎重に埋め戻すことが求められるでしょう。地中埋蔵物については、取り除いたあとに埋め戻しをする必要があります。
井戸を埋める作業は自分でもできそうですが、特殊な道具・重機を使用するため、誰でも行える作業ではありません。安易に土や砂で埋めてしまうと、周辺の地盤をゆるくしてしまうおそれもあります。
そうなると、家屋へ影響を与えてしまうことや水質を損ねてしまうことにつながってしまうかもしれません。そのような事態を防ぐためにも、井戸の埋め戻しの工事経験がある解体業者へ依頼しましょう。
住宅の解体工事・新築工事などを検討する際、見積もりを複数の業者へ依頼することが一般的です。井戸の埋め戻しを行う場合においても、複数の業者から相見積もりを取るようにしましょう。
ここまで解説したように、井戸を埋め戻すには技術が必要です。しかし、解体業者によっては技術や施工実績がないおそれもあります。また、相場を把握して適正価格で埋め戻しをするためにも、相見積もりを取ることは欠かせません。
井戸の埋め戻しを行う業者を選ぶポイントは、これまでに施工した経験があるかや風習・しきたりに理解を示しているかなど確認しましょう。もしも、業者に知識がなければ、作業途中に想定外のことが発生した場合にどのように対応すればよいかわからなくなってしまうおそれがあります。
また、お祓いは地域・宗教的な意味合いが強いものですが、売買契約に影響することも考えられるため、きちんとした理解を示してくれる業者を選ぶようにしましょう。
井戸の埋め戻しは、自分で行うことは不可能と言い切れません。しかし、単に土や砂を井戸に入れて埋め戻すだけでは、以下のようなトラブルが発生するおそれがあります。
特に、売買契約する際、お祓いの有無を説明する必要もありますし、購入を避けられることが考えられるでしょう。もしも、井戸の存在・お祓いの有無を説明せずに土地を売却すると、瑕疵担保責任を問われてしまうおそれがあるため、注意が必要です。
井戸の埋め戻しを検討するポイントには、以下の2つが挙げられます。
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
井戸の解体を考える際、もう本当に使わないのか? といった点をよく検討する必要があります。もしも井戸を使うことができるのであれば、埋め戻さずに残しておくことも選択肢とできます。
活用例を挙げると、井戸があることによって生活用水の確保に役立つでしょう。また、古民家付きの土地を購入する人には、そのまま使える井戸があることに魅力を感じる人もいます。
いずれにしても井戸を埋め戻す場合は、利用できるかどうかを確認して解体の必要性を考えてみるとよいでしょう。
最近では、防災意識が高まっており、井戸の存在が見直されつつあります。
先ほども例を挙げたように、生活用水としての活用することはもちろん、井戸端を改修して停電した場合でも使えるようにし、周辺地域の防災に備えているところが増えているようです。実際に災害へ備えるために、井戸の維持・改修に補助金を助成している制度が設けられている自治体もあります。
井戸の埋め戻し費用に関するよくある質問には、以下の3つが挙げられます。
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
井戸の埋め戻し相場は、主に以下の2つです。
井戸単体の埋め戻し:約10万円
井戸の解体と同時:3〜5万円
一般的には、家屋の解体と同時に埋め戻しを依頼する方が安い費用で済むことが多いようです。
さらに、お祓いを行う場合は、これらに加えて3万円ほどが発生します。お祓いに必要となる金額は、依頼する神主や僧侶によっても違いがあるため、事前に確認しておきましょう。
井戸の埋め戻しの具体的な作業方法については、以下の手順を踏みます。
底部分を砂利などで埋めるのは、地下水脈を邪魔しないことが理由です。また、上の部分を土などを使って埋めるのは、雨などが染み込まないようにすることが理由として挙げられます。
「息抜き」とは井戸の底から外に向けてパイプを通す作業のことを指します。井戸の息抜きには、信仰的な意味と物理的な影響を発生させない目的があります。
信仰的な意味としては「神様が井戸の外へ出られるようにする」ことが挙げられ、物理的な影響を抑えることには「井戸から発生するガスを抜けるようにする」ことなどが挙げられるでしょう。
井戸の埋め戻し費用や手順、注意点について解説しました。井戸の埋め戻しは一見すると、素人でもできるように感じてしまうかもしれません。しかし、きちんとした手順を踏まなければ、地盤が軟化したり、水質汚染させたりするおそれがあります。
そのため、井戸の埋め戻しは施工実績がある解体業者へ依頼するようにしましょう。その際、複数の業者から見積もりを取って、相場を確認してから行うようにすると失敗やトラブルを避けることにつながります。
ちなみに、次のページでは、古民家再生リフォームにかかる費用相場を解説しています。古民家リフォームを検討されている方はぜひ参考にしてみてください。